親や親族から家や土地などの不動産を相続した場合、すぐに売るかどうかで悩む方は多いでしょう。
「3年以内に売却すると節税になる」と言われる理由は、「相続税の取得費加算の特例」が適用されるためです。
ただし、相続した不動産の売却には手続きや税務の知識が必要で、
手順を誤ると思わぬ税負担が生じることもあります。
この記事では、以下の内容を詳しく解説します。
- なぜ3年以内に売るべきなのか?
- 具体的な税額シミュレーション
- 売却に向けた手続きの流れと注意点
- 売らずに活用する場合の選択肢
相続した不動産は3年以内に売ると節税になる理由
「相続税の取得費加算の特例」について
「相続税の取得費加算の特例」とは、相続税を支払った人が不動産を3年以内に売却した場合、
支払った相続税の一部を「不動産の取得費」に加算できるというものです。
結果として譲渡所得(売却益)が減り、譲渡所得税が軽減されます。
譲渡所得税の仕組み
譲渡所得 = 売却価格 −(取得費 + 譲渡費用 + 相続税の取得費加算)
譲渡所得税は、売却益に対して以下の税率がかかってきます。
- 長期譲渡所得(不動産を5年以上保有):20.315%(所得税15% + 住民税5% + 復興特別所得税0.315%)
- 短期譲渡所得(5年以下):39.63%
相続直後に売却する場合、相続日からの所有期間が引き継がれるため、多くの場合「長期譲渡所得税」が適用されます。
具体的なシミュレーション
項目 | 金額 |
---|---|
売却価格 | 5,000万円 |
取得費(購入費用) | 1,000万円 |
譲渡費用(仲介手数料等) | 200万円 |
支払った相続税 | 1,200万円 |
① 取得費加算なしの譲渡所得
(売却価格)5,000万円 − (取得費)1,000万円 − (譲渡費用)200万円 = (譲渡所得)3,800万円
→ 譲渡所得税:3,800万円 × 20.315% = 771万円
② 取得費加算ありの譲渡所得
(譲渡所得)3,800万円 − (支払った相続税)1,200万円 = 2,600万円
→ 譲渡所得税:2,600万円 × 20.315% = 528万円
節税額:771万円 – 528万円 = 243万円
3年以内に不動産を売る手続きの流れ
① 相続登記(名義変更)の実施
不動産の売却には、相続登記が必須です。
相続登記については以下の記事を参考にしてください。
必要書類
- 遺産分割協議書
- 被相続人の戸籍謄本・住民票の除票
- 固定資産評価証明書
- 登記申請書
費用:司法書士に依頼する場合、約10~15万円。
② 不動産の査定依頼
複数の不動産会社に査定を依頼し、市場価格を把握します。
ポイント
建物の築年数や状態
地域の需要と供給バランス
不動産一括査定サービスを活用すると手間が省けます。
③ 売却活動の開始
- 仲介売却:市場価格に近い価格で売れるが、時間がかかる
- 不動産会社への買取:即現金化できるが、価格は低め
④ 売買契約の締結と確定申告
- 売却代金の受け取りと引き渡し
- 翌年、確定申告時に「相続税の取得費加算」を申請
3. 売らない場合の選択肢
相続した不動産を「売らない」という選択肢もあります。
① 賃貸物件として活用
空き家を賃貸に出し、家賃収入を得る方法です。
② 不動産管理会社に委託
遠方に住んでいる場合、不動産管理会社に任せて家賃収入を得ることができます。
③ 家族・親族に譲渡する
相続人同士で共有名義になっている場合、名義を一本化し、
一部を他の親族に譲渡することでトラブルを回避できます。
よくある質問(FAQ)
Q1. 相続した家が空き家のままだと何か問題はありますか?
A. はい、空き家は固定資産税の負担に加え、「特定空き家」に指定されると税負担が大幅に増えることがあります。
Q2. 3年以内に売る際に必ず特例が適用されますか?
A. いいえ、相続税が発生しない場合や申請手続きが適切に行われなかった場合は適用されません。
Q3. 節税の相談はどこにすればいいですか?
A. 税理士や不動産の専門家に相談するのが確実です。特に複雑なケースでは専門家のサポートが必須です。
まとめ
相続した不動産を3年以内に売却すると、「相続税の取得費加算の特例」により大きな節税が可能です。
しかし、期限を過ぎると適用外となるため、早めの手続きが重要です。
手続きに不安がある方は、不動産会社や税理士に相談しながら進めてください。「賢く相続不動産を売却して、税金対策を成功させましょう!」
コメント