相続した家を放棄するかどうかは、多くの家族にとって大きな悩みの種です。
「相続放棄をすれば、家を維持するためのコストや手間が省けるかもしれない」と考える一方で、「後々になって後悔するのでは?」と不安に思うこともあるでしょう。
それでも、自分が相続人だと知ってから(被相続人がなくなったと知った日から)3カ月以内に相続放棄の手続きを始めなければならないです。
悩んでいる間に強制的に相続してしまったなんてことが無いように、本記事では、家の相続放棄についてメリットとデメリットを詳しく解説し、後悔しないために必要な判断基準や相続放棄の手続き方法を紹介します。
家の相続放棄とは?基本から抑えるべきポイント
相続放棄とは、相続人が被相続人の財産を全て相続しないことを選ぶことです。プラスの財産とその財産で相殺できるだけのマイナスの財産も合わせて引き継ぐ「限定承認」はありますが、一部の財産だけ相続したいなどの都合の良いことは不可能です。
特に昨今は、不動産である家が原因で相続放棄するケースが増えています。
これは、「管理不全空き家」も固定資産税6倍の対象となったことで、相続後の固定資産税や維持費、管理の手間が大きな負担となってしまったためです。
しかし、相続放棄をすることで、これらの負担から解放される一方で、資産である家を失うことによるデメリットも無視できません。
家の相続放棄のメリットとデメリット
相続放棄にはいくつかのメリットとデメリットがあります。
メリットとしては、まず相続放棄することで、固定資産税や管理費、修繕費などの経済的負担を回避できる点があります。また、遠方にある家を放棄することで、管理や処分の手間から解放されることも大きなメリットです。
相続後に住まないから管理をせず放置していて、「特定空き家」「管理不全空き家」に認定されてしまい固定資産税が6倍といったケースもあるので管理が難しい方は、相続放棄という選択が多いようです。
一方で放棄する場合のデメリットも存在します。
例えば、家という資産を手放すと言うことは完全に自分の手から離れるので、将来的にその土地が価値を持つ可能性も手放すことになります。
他にも、相続放棄後の家の処分に関する手続きが複雑であり、家族間でのトラブルの原因になることもあります。
家の相続放棄の具体的なやり方と注意点
先ほども述べた通り、家のみを相続放棄とはできません。相続放棄をするとなると全ての財産の相続を放棄することとなります。
相続放棄をする場合、まず被相続人の最後の住所地の家庭裁判所に対して相続放棄の申述を行います。
下記の申述書等の書類を提出し、裁判所から承認を受けることで相続放棄が成立します。
【相続放棄に必要な物】
- 相続放棄の申述書
- 標準的な申立添付書類(戸籍等の全部事項証明書)
- 印鑑(認印可)
- 身分証明書(運転免許証など)
※申立添付書類は、被相続人との続柄で変わります。
【参考】 最高裁判所: 相続の放棄の申述
この手続きには注意が必要です。
【相続放棄に注意点】
-
- 知らずに申告期限を過ぎてしまう。
相続放棄の意思表示が期限内に行われなければ、相続放棄が無効になる場合があります。その期限は、自分が相続人だと知ってから(被相続人がなくなったと知った日から)3カ月以内になります。知らなかったとしても期限を過ぎてしまうと、相続を承認したものとみなされてしまう可能性があるので注意しましょう。(民法915条1項) - 放棄の期間の伸長の理由が私事的
相続財産の状況を調査しても判断材料が足りない場合は、相続の承認又は放棄の期間の伸長の申立てがでますが。私事的なことで調査に時間を割けなかったという理由では、申し立ては認められないので注意が必要です。原則期限内で進めることをお勧めします。 - 相続財産の処分や秘匿は厳禁
秘匿はもちろんですが、勝手に被相続人の財産を処分する行為は、相続したものとみなされてしまいます。もしマイナスの財産が多いと分かっても勝手に処分せずに必ず遺産放棄をしましょう。(民法915条1項、3項)
- 知らずに申告期限を過ぎてしまう。
また、放棄手続き中に他の相続人とトラブルが発生しやすい点も注意が必要です。
例えば、自分が相続人だけども他の家族が売却や処分してしまうなどのケースなどがあります。
そうなってしまったら相続問題に関するトラブルは、ご自身で解決するのは難しい場合が多いです。複雑化する前に早めに弁護士に相談して、適切な解決策を見つけることをおすすめします。
家の相続放棄で損しないための判断基準
家を相続放棄するかどうかは、経済的な負担と将来的なリターンのバランスを見極めることが重要です。放棄すべきかどうかを判断するためのポイントとしては、まず家の維持にかかる税金・管理費などにかかる費用と、その家が将来的に負債を上回る確率を比較することが挙げられます。
将来的とは難しい話ですが、例えば、東京都以外でも上がるケースはあります。
例えば、土地の再開発や新路線の開通などです。
実際に国土交通省が2024年3月26日に発表した2024年1月1日時点の神奈川県の地価公示で、前年よりも県央地域の全ての市町村で住宅地の上昇率がみられています。相鉄線沿線は、10年で10%以上の上昇をした場所もあるとのことなので、調査もせずにすぐ相続放棄をするのはもったいないことだと思いませんか?
個人調査するには、凄く時間がかかってしまうので不動産などの専門家に一度相談して、家の市場価値や処分にかかるコストを把握してから決断することをおすすめします。
家の相続放棄で後悔しないために知っておくべきこと
家を相続放棄した後、その家の処分に関する問題が発生することがあります。
例えば、ここでも兄弟などの他の相続人との間で家の管理や処分に関するトラブルが起きる可能性があります。
例えば、全員が相続放棄した場合に相続財産管理人が選任されるまでの間は、誰が不動産を管理するのかなどです。最後に相続放棄をした者が、相続財産を管理する義務を負うとされていました。ですが、現在では「現に占有している者」となっているため、全員が住んでいない場合に誰が管理するのか揉める場合もあります。
また、自分が相続放棄した家が次の相続人によって売却され、その価値が思ったよりも高かったと後悔するケースもあります。なので事前に家の相続放棄に関する情報をしっかりと集め、後悔しないよう慎重に判断することが大切です。
まとめ:家の相続放棄を慎重に検討するためのアドバイス
家の相続放棄は、経済的な負担を減らすために有効な選択肢ですが、その一方で失うものも大きいです。
実際に過去に相続放棄した家が、土地の再開発で価格が上昇したという方も多くいらっしゃいます。
損しないためには、メリットとデメリットを正確に把握し、専門家の意見を参考にしながら慎重に判断することが必要です。
相続放棄を考えている方は、この記事を参考に、自分にとって最善の選択が何かをじっくり検討してみてください。
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