1. 相続にまつわる不安
現代の日本は、3組中1組が離婚をしています。そして、婚姻の4組中1組は再婚による結婚です。
年々と再婚率は上昇しています。今や再婚は、当たり前になりつつある中で「再婚して新しい家族ができたけれど、もしもの時、連れ子に財産をどう渡せばいいの?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか?
相続に関する法律は非常に複雑で、何も対策をしなければ連れ子に相続が出来なかったということが起きてしまいます。本記事では、連れ子がいる家族が直面しがちな相続の問題点と、解決策について具体的に解説します。
2. よくある質問①:連れ子には本当に相続権がないの?
Q. 連れ子には義理の親の財産を相続する権利がないって本当ですか?
民法の規定では、連れ子は実子ではないため、基本的には相続権を持ちません。これは、相続権が「血族」や「養子」に限定されているためです。何も対策を取らないまま義理の親が亡くなった場合、連れ子には財産を引き継ぐ法的権利がなくなる可能性があります。
3. 具体的なエピソード:実際にあった相続トラブル
養子縁組を行わずに遺言書も残さなかったために発生したトラブル
トラブルになったきっかけ
50代の坂本さんは、再婚相手の高橋さんとその連れ子の瞬君と一緒に幸せに暮らしていました。
坂本さんは自分の子どもはおらず、高橋さんの連れ子である瞬君を実の息子のように愛していました。
この時は、坂本さんは「自分が亡くなった後も、瞬君は妻と一緒に暮らし、問題なく財産を分け与えることができるだろう」と楽観的に考えていました。なので坂本さんは当然、養子縁組の手続きを行わず、遺言書の作成もしませんでした。
ある時、坂本さんが急病で亡くなってしまいました。
そこで問題が発生しました。法律上、坂本さんの遺産を相続できるのは配偶者である高橋さんと、坂本さんの実子がいればその子どもです。しかし、坂本さんに実子はおらず、高橋さんの連れ子である瞬君も法律上の相続人には含まれていませんでした。
結果的に、坂本さんが生前に築いた家や預貯金はすべて高橋さんが相続する形になりました。
さらなるトラブルが発生
それだけで問題は終わりませんでした。遺言書がないことを良いことに坂本さんの兄弟たちが遺産に対して「遺留分侵害」を主張しはじめたのです。法律上では、兄弟姉妹には遺留分(最低限保障された相続分)はありませんが、坂本さんが遺言書を作成していない場合、法定相続に基づいて第3順位にあたる兄弟も相続権を有していることになります。このため、兄弟たちは「坂本さんの財産は本来、兄弟にも分けられるべきだ」と異議を唱え、相続分を主張しました。
坂本さんが遺言書を作成していなかったため、坂本さんの相続は民法で定められた法定相続分に基づいて分配されることになりました。法定相続の原則では、配偶者と兄弟が相続人になる場合、遺産は「配偶者が3分の2、兄弟が3分の1」の割合で分割されます。
兄弟たちは法定相続分として遺産の3分の1を主張しました。一方、高橋さんは坂本さんの意思を尊重して連れ子の瞬君に財産の一部を渡すつもりでしたが、坂本さんの兄弟から異議を唱えられたため、相続争いが発生しました。
相続争いの結果と影響
坂本さんの兄弟たちは、家庭裁判を起こして法定相続分を主張しました。
高橋さんとしては、坂本さんの遺志を尊重し、瞬君に財産を譲るために兄弟と争うことになりましたが、相続に関する裁判は長期化し、最終的には多額の裁判や弁護士費用がかかることや家族関係がさらに悪化することを懸念し、やむを得ず和解を選ぶ形となりました。
結果的に、坂本さんの兄弟が遺産の3分の1を受け取り、高橋さんと瞬君にはそれ以外の3分の2の遺産が渡ることとなりましたが、瞬君には期待していた財産の大部分を残せない結果となってしまったのです。
なぜこのような問題が起きたのか?
坂本さんが亡くなる前に養子縁組を行っていた場合、瞬君は法律上でも坂本さんの「子ども」として認められ、法定相続人となっていたはずです。そうなれば、配偶者と子に遺産が相続されます。
また、養子縁組を行わないまでも、坂本さんが遺言書を作成していれば、坂本さんの意思に基づいて瞬君に財産を渡すことができ、相続争いを未然に防げた可能性が高いです。
4. 連れ子に財産を引き継ぐための具体的な方法
養子縁組をする
連れ子に確実に財産を引き継がせるためには、養子縁組をすることが最も確実です。しかし、養子縁組には2種類あり、それぞれに特徴と注意点があります。
遺言書を作成する
もし養子縁組を行わない場合でも、遺言書を作成しておけば、連れ子にも財産を残すことが可能です。
遺言書にはいくつかの種類があり、作成方法や効力が異なります。
状況に合わせて、どの形式の遺言が適しているかを専門家と相談し、適切な形で作成することが重要です。
生前贈与を活用する
また、生前贈与という手段もあります。生きている間に、連れ子に財産を分けておくことで、相続時のトラブルを未然に防ぐことができます。ただし、贈与税に注意が必要です。贈与には非課税枠がありますが、贈与税が発生する場合もあるため、税理士に相談して適切な手続きを進めることをおすすめします。
さらに、贈与契約書を作成しておくことも重要です。これにより、後々のトラブルを避け、法的に贈与が確実に行われたことを証明できます。
5. よくある質問②:「養子縁組と遺言書、どちらが良いですか?」
Q. 連れ子に財産を残したい場合、養子縁組をするべきでしょうか?それとも遺言書だけで良いのでしょうか?
養子縁組をすることで、連れ子は法的に実子と同じ立場になり、相続権が自動的に発生します。ただし、場合によっては遺言書で十分なケースもあります。例えば、財産が少なく遺言で十分に分けられる場合や、他の相続人とのトラブルを避けたい場合は、遺言書が適しています。
6. 読者へのアドバイス:早めの対策が鍵
早めの対策が大切
家庭の場合、相続に関する法的手続きや意思の伝達が曖昧だと、後々トラブルに発展することが多いです。家族が円満に遺産を分け合い、全員が納得できるようにするためにも、早い段階で相続に関する準備を始めることが重要です。
家族で話し合う
相続は家族全体に影響を及ぼす問題です。家族内でしっかりと話し合い、相互の意見を尊重しながら、最良の解決策を見つけていくことが大切です。特に、再婚家庭や連れ子がいる場合、遺産分割の方法について家族全員で納得できるような話し合いを行いましょう。これにより、トラブルの発生を防ぎ、円満な相続を実現することができます。
専門家の力を借りる
相続に関する法律や税務の知識は専門的で、家族だけで全てを理解し進めるのは困難な場合があります。弁護士、司法書士、税理士などの専門家に相談することで、正確な情報を基にした最適な選択ができるようになります。特に相続対策においては、事前に専門家のアドバイスを受け、正確な手続きを進めることが、後のトラブルを回避するために非常に有効です。
連れ子の相続は慎重に
連れ子がいる家庭では、相続に関する特別な配慮が必要です。法律に基づいた確実な相続計画を立てることで、家族間のトラブルを避け、安心して未来を迎えられるようにしましょう。養子縁組や遺言書の作成、生前贈与の活用など、各家庭に合った方法を専門家と一緒に検討し、早めに対策を講じることが大切です。家族全員が納得できる相続計画を立て、円満な家庭を築くために、今からしっかりと準備をしておきましょう。
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