事実婚や内縁関係という形で一緒に暮らしてきたパートナーが亡くなった時に、「内縁の妻には法的に相続権がない」ということで相続ができないという事実を、その時に知るかもしれません。中には、これからどう生活していけば良いのかと悩む方もいらっしゃると思います。
実際には内縁の妻でも財産を受け取れる方法があります。この記事では、事実婚の妻が直面する問題や対策を、具体的な手続きと共にご紹介します。「事実婚」や「内縁」を検討している、またはその状況である方々が、未来に向けた準備をする手助けになればと思います。
1. 内縁の妻や事実婚とは?法律上の定義
「内縁の妻」とは、法的な婚姻届を提出していないものの、夫婦同然の生活を共にしている女性を指します。たとえ社会的に夫婦と認められていても、法律上は正式な「配偶者」としては扱われません。「事実婚」も婚姻届を出していないという点では一緒なのですが、違いとされているのは、内縁の妻は結婚で戸籍を入れる意思はあるが、「別姓でなければならない」などの諸事情で入れられない場合のことを指しているのに対し、「戸籍を入れるのは損だと感じる」「戸籍を入れるのは手続きがめんどくさい」など自分たちの意思で戸籍を入れるのに疑問を持って入れない結婚が事実婚とされています。
また、法律上の「同棲」と内縁関係の違いは、結婚の意思があるかどうかにあります。つまり、内縁の関係には明確な「夫婦である」という意思があり、周囲からもそのように認識されていることが重要です。
あなたが事実婚や内縁関係で長く暮らしてきたパートナーがいる場合、形式的な手続きをしていないというだけで、お互いに結婚して暮らしている意識は持っていますよね。
しかし、結婚詐欺などの兼ね合いもあって事実婚や内縁の妻は法律上の「相続権」には反映されないのが現実です。この点を理解しつつ、どう相続に対処すべきかを見ていきましょう。
2. 法律上の内縁の妻の相続権の現状
民法890条によれば、「配偶者は常に相続人となる」とされています。しかし、この「配偶者」とは、あくまで法的に婚姻届を提出している人を指します。残念ながら、どれだけ長い間、内縁関係にあったとしても、法的には相続権が与えられないのです。
内縁の妻に相続権がないという事実に直面すると、「やっぱり婚姻届けを出すべき」と感じるかもしれません。例えば、パートナーまたは自身が亡くなり、預貯金や不動産といった重要な財産が法定相続人である親や兄弟に渡ってしまうと、パートナーや自身がその後どう生活を続けるかを不安に感じますよね。
しかし、あきらめる必要はありません!相続権がなくても、適切な手続きで内縁の妻が財産を受け取る方法が存在します。
3. 体験者が取った3つの対応法
相続権がない内縁の妻でも、適切な対策を講じることでパートナーの遺産を受け取ることが可能です。以下に、実際に内縁の妻として相続を考えた方々が活用した3つの具体的な方法をご紹介します。
3.1. 遺言書の作成
遺言書を作成することが、最も確実で安心な方法です。内縁の妻であっても、パートナーが遺言書に記載すれば、財産を「遺贈」することができます。遺言書は、公正証書として作成しておくことで、遺産分割の際に法的な力を持つため、より確実に実行されます。ただし、遺留分を持つ法定相続人がその権利を主張している場合には、遺言で指定された全ての財産を受け取れるとは限らないことを知っておくことも重要です。
体験談
「夫は生前から遺言書の作成を進めてくれていたので、彼が亡くなった後も遺産の一部を受け取れて、子供たちと安心して生活を続けることができました。遺言書がなかったら、私たちに何も残されなかったかもしれないと思うと少しゾッとしましたが、夫がしっかりした人で良かったです。」
具体的な手続き
公証役場で公正証書遺言を作成します。遺言書には、証人2名が必要であり、遺言の内容が法的に有効な形で記録されます。
また、通常の相続人に相続する場合と異なって「遺贈」にあたるので、情報の書き間違えや書き漏れがあると後に「夫の残した遺書の内容に間違えがあって財産が分配されなかった…」なんてことになる可能性もあります。行政書士などの専門家に相談しながら作成することをおススメします。
3.2. 生前贈与
生前贈与は、内縁の妻に財産を渡すもう一つの手段です。内縁の妻であっても、贈与を通じて財産を受け取ることができます。ただし、贈与税がかかるため、税務対策が重要です。年間110万円までの非課税枠を利用し、計画的に贈与を行うことが推奨されます。
体験談
「普段から彼が少しずつ私名義の口座へ入金をしてくれています。それを、元手にマンション経営をして定期的に自分の収入としてまとまった額が入るようになりました。今では、老後でも安心して暮らせるくらい貯金ができました。」
具体的な手続き
贈与税の基礎控除額である年間110万円以下であれば、贈与税はかかりません。贈与額がそれを超える場合は、翌年に贈与税の申告が必要です。
3.3. 生命保険を活用
生命保険は、遺産分割の対象にならないため、内縁の妻に確実に財産を遺すための一つの方法です。パートナーが生命保険の受取人に内縁の妻を指定することで、相続財産とは別に受け取れる財産が生まれます。ただし、生命保険金も相続税の対象になるため、税務計画は必要です。
体験談
「私たちは、途中から離婚をして事実婚という道を選びましたが、彼が生命保険の受取人を私名義にしておいてくれたので、万が一の時も経済的に困ることがありませんでした。」
受取人と認められる主な条件
- お互いに戸籍上での配偶者がいないこと
- 保険会社が指定する所定の期間中に、同居人であること
- 保険会社が指定する所定の期間中に、生計を一緒にしていること
4. まとめ:内縁の妻が遺産を受け取るための準備
事実婚や内縁の妻としての立場にいる場合、パートナーとの将来を考える中で、相続問題に向き合うのは避けたいことかもしれません。
しかし、現実には法的な相続権がないため、事前に準備をしておくことがとても重要です。遺言書や生前贈与、生命保険などを活用し、専門家に相談しながら対策を進めていきましょう。早めの準備が、将来の安心につながります。
5. よくある質問
Q1. 内縁の妻は何も相続できないのでしょうか?
A: 内縁の妻には法定相続権はありませんが、遺言書や生前贈与、生命保険を通じて財産を受け取ることができます。これらの方法を事前に準備することで、財産を守ることが可能です。
Q2. 遺言書はどのように作成しますか?
A: 公証役場で公正証書遺言を作成することで、法的に有効な形で遺産を内縁の妻に残すことができます。公証人と証人2名を立てて作成します。
Q3. 生前贈与には贈与税がかかりますか?
A: はい、贈与税の基礎控除額は年間110万円です。それを超える金額については贈与税が課税されます。税務対策として、計画的に少額ずつ贈与するのが一般的です。税理士に相談しながら適切な贈与額を決めていくことをお勧めします。
Q4. 生命保険はどう活用すれば良いですか?
A: 生命保険は相続財産とは別扱いとなり、受取人を内縁の妻に設定することで確実に財産を残すことができます。保険金は遺産分割の対象外ですが、相続税が課税されることを念頭に置き、事前に税理士と相談すると良いでしょう。
まとめ
内縁の妻に相続権がないという法律の壁は、非常に厳しく感じるかもしれません。場合によっては、戸籍を入れることも検討するかと思います。
しかし、遺言書や生前贈与、生命保険の活用といった具体的な手続きによって、パートナーの財産を受け継ぐ方法は確実にあります。大切なことは早めに対策を講じ、将来の不安を少しでも軽減することが大切です。
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