日本に住む外国人は年々増加傾向にあります。そんな中でも多いのが中国であり、令和5年末時点で82万人と山梨県や佐賀県の人口よりも多いです。
この記事を読む方の中でも「親が中国人で、相続の手続きってどうすればいいの?」そんな不安を抱えている方もいらっしゃると思います。国際相続はちょっと複雑ですが、この記事では必要な手続きと心構えをわかりやすくお伝えします。
最後まで読んでいただければ、「ああ、こうすればいいんだ」と少し安心していただけるはずです。
1. そもそも、日本人が中国籍の親の遺産を相続できるの?
中国だから相続できないんじゃ?と考えてしまいますよね。
しかし結論から言いますと、2024年現在は大丈夫です。
中国法では、国籍に関係なく子どもは法定相続人とされており、親が中国籍でも日本人の子どもが相続する権利はきちんとあります【6】【7】。
ただし、中国国内の資産を相続する場合には、現地の法律に従った手続きが必要です。特に不動産や銀行口座などがある場合は、中国の公証人と連携しながら書類を揃えなければならないので、時間に余裕を持って準備するのが大切です。
2. どの国の法律が適用される?準拠法を理解しよう
国際相続では「どの国の法律が適用されるか」が重要です。日本の「法の適用に関する通則法」によると、相続は被相続人(亡くなった親)の国籍法に従います【7】。つまり、中国籍の親の場合は、基本的には中国の法律に従って手続きが進められます。
ただし、次のケースでは日本法が適用されます:
- 日本国内にある不動産については、日本法が優先されます。
- 親が日本に最後の住所を持っていた場合は、日本の家庭裁判所で調停が可能です【8】。
親(被相続人)が 「在日中国人」 の場合に適用される法律 |
親(被相続人)が 「中国居住中国人」 の場合に適用される法律 |
|
日本国内の不動産 | 日本の法律 | 日本の法律 |
日本国内の動産 (銀行預金等) |
中国の法律 | |
中国にある動産 (銀行預金等) |
||
中国にある不動産 | 中国の法律 |
3. 中国法と日本法の違い:相続の順番に違いがあるの?
中国と日本の相続法では、相続人の順位と相続分の決め方にいくつかの重要な違いがあります。両国の法律は、家族構成の捉え方や文化の違いが反映されており、その結果、相続手続きや相続権も異なります。
順位 | 中国法 | 日本法 |
---|---|---|
第1順位 | 配偶者、子、父母 | 子、配偶者 |
第2順位 | 兄弟姉妹、祖父母 | 直系尊属(親) |
第3順位 | 遠い親族 | 兄弟姉妹 |
中国では、自分の両親を大切にする文化があり、それが制度にも表れていますね。
具体例で考えてみよう!
事例1:日本人の子どもが中国の不動産を相続したケース
Aさん(40代・日本在住)は、中国国籍の父親を亡くし、中国内に不動産が遺されました。
父親の遺言がなかったため、中国法に基づいて相続手続きを進めることになりました。
Aさんは以下の手続きを行いました。
- 中国国内で親族関係公証書を取得。
- 父親との関係を証明するため、中国の公証人を通じて証明書を準備しました。
- 中国の役所で登記手続きを実施。
- 現地の不動産登記所に必要書類を提出し、名義変更を完了しました。
このとき、中国法では父母も法定相続人であるため、Aさんは中国に住む祖父母とも協議を行い、無事に遺産分割がまとまりました。
事例2:親が日本に残した銀行預金を相続するケース
Bさん(50代)は、中国国籍の母親が日本の銀行に預金を残したまま亡くなりました。母親の遺言はなく、兄弟との話し合いが必要でした。
- 家庭裁判所で調停を申立て
- 相続人の意見が合わず、日本の家庭裁判所で調停を行うことにしました。
- 調停で遺産分割の合意
- 調停の結果、Bさんと兄弟は母親の預金を均等に分けることに合意し、銀行への提出書類を準備。
- 日本の銀行の規定に従い、遺産分割協議書と必要な証明書を提出し、無事に相続が完了しました。
このように、資産の種類や場所によって法律が異なることを理解しておくと安心です。
4. 相続手続きに必要な書類:早めの準備がカギ!
中国の戸籍制度「戸口簿(hukou)」はありますが、日本の戸籍謄本のように直接相続の証明に使えるわけではありません。そのため、相続には以下のような書類が必要です。
中国で必要な書類
- 親族関係公証書:親子や配偶者の関係を証明する重要な書類です。
- 出生証明書・婚姻証明書:親族関係を補完するための証明書類です。
日本での手続きに必要な書類
- 戸籍謄本・住民票:相続人を特定するために使用します。
- 遺産分割協議書:日本国内の資産を相続する際に必要です。
5. 万が一トラブルになったら…家庭裁判所の調停が頼りになる
相続人同士で協議が整わない場合は、日本の家庭裁判所での調停を申立てることができます。たとえば、日本にある銀行口座の分配で意見が合わないときは、裁判所を通じて解決できます【8】。
実際の事例
Bさんは中国人の母親の相続を進める中で、兄弟との間で協議がまとまらず、日本の家庭裁判所で調停を行いました。調停を経て、無事に遺産分割が完了し、お互いに納得して相続を終えることができました。
6. Q&A:みんなが気になる質問にお答えします
Q1. 中国籍の親の遺産を日本から相続するのは大変ですか?
A: 少し手間はかかりますが、必要な書類を早めに揃えておくことでスムーズに進められます。専門家のサポートも頼りにしましょう【6】【7】。
Q2. 中国国内の不動産をどうやって相続するの?
A: 中国の公証人を通じた手続きが必要になります。親族関係の公証書や必要書類を揃えることが大切です。
Q3. 日本にある資産も中国の法律で手続きするの?
A: いいえ、日本国内の資産は日本法に基づいて手続きを行います。不動産や銀行口座もそれぞれの所在地の法律が適用されます【8】。
7. まとめ
- 法改正に備えた最新情報を確認:中国法は変更される可能性があるので、常に新しい情報をチェックしましょう。
- 必要書類を早めに準備:日中両国で必要な書類を揃えることで、スムーズな手続きが可能になります。
- 専門家のサポートを活用:困ったときは、弁護士や司法書士に相談するのが安心です。
- 家族との協力を大切に:相続は家族での協力が欠かせません。事前に話し合いを進めておきましょう。
【参考文献】
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