2024年4月から、不動産の相続登記が義務化され、「相続人申告登記」を怠ると過料(罰金)が科される可能性があります。
正しい手続きを行わないと、権利関係が不明確になるだけでなく、売却や管理が困難になるケースも考えられます。本記事では、相続人申告登記の重要性、手続きの流れ、そして放置した場合のリスクについて解説し、よくある質問にもお答えします。
1. 相続人申告登記とは?
「相続人申告登記」とは、不動産を相続した場合に、被相続人(亡くなった人)から相続人へ所有者名義を変更するための法的手続きを指します。この登記手続きを行うことで、相続人が正式に不動産の所有者となり、売却や活用が可能になります。
なぜ登記が必要か?
登記は、不動産の所有権を公的に証明するための重要な手続きです。登記されていないと、売買や担保の設定ができず、後々トラブルを招く原因になります。特に相続が絡む不動産では、相続人間の争いを防ぐためにも、登記で所有権を明確にすることが不可欠です。
2. 相続登記の歴史と2024年の義務化の背景
相続登記の歴史
相続登記制度は、1899年(明治32年)に施行された旧不動産登記法を起源とします。当時から、不動産の権利関係を明確にするため、土地や建物の名義を法的に登録する仕組みが整えられました。しかし、初期の法律では相続による登記は任意とされており、名義をそのまま放置するケースが増えたのが問題となりました。
昭和時代から現代にかけて、相続登記がなされず、所有者不明土地が増加し、公共事業や開発を阻む要因になってきました。特に地方において、相続人が長期間登記を放置するケースが多く、こうした土地の総面積は、なんと九州地方の広さに匹敵すると言われています。
2024年の相続登記義務化の背景
こうした社会問題を受け、相続登記の義務化が議論され、2024年4月に法改正が施行されることになりました。この改正は、放置された不動産を減らし、不動産の所有者を明確化することで、今後の土地管理を円滑に進める狙いがあります。
また、相続登記の義務化と同時に、相続放棄を申告する制度も整備され、財産を引き継ぎたくない場合でも、登記を放置するリスクを避けられるようになっています。
3. 放置した場合のリスクとは?
相続人申告登記を放置すると、次のようなリスクが生じます。
不動産の活用や売却ができない
登記が完了していないため、正式な所有者として認められず、不動産の売却や活用ができません。
事例
田中さんは父親から相続した土地を売却しようと考えていましたが、登記を父親名義のままにしていたため、購入希望者が銀行から融資を受けられず、売買が成立しませんでした。
解説
登記がされていないと、正式な所有者として認められず、不動産の売却や担保設定ができなくなります。このため、登記の遅延は経済的な損失を招く可能性があります。
相続人間のトラブルが発生する
名義変更を怠ると、相続人同士で争いが起き、遺産分割が長期化する可能性があります。
事例
鈴木さんは母親から相続した不動産の登記を行わず放置していました。その後、兄弟の一人がその家を第三者に無断で賃貸してしまい、鈴木さんはこれを止めることができず、兄弟間で大きな争いに発展しました。
解説
登記がされていないと、誰が所有者であるか不明確なため、他の相続人が不動産を勝手に利用したり処分することが可能になってしまいます。
過料(罰金)が科される
義務化後は、登記を怠ると過料が科されるため、早めの手続きが求められます。
事例
山本さんは相続した不動産を3年間放置した結果、法務局からの通知を受け、10万円の過料を支払うことになりました。
解説
2024年以降、相続登記を怠ると10万円以下の**過料(罰金)**が科されます。これを避けるためには、期限内の手続きが不可欠です。
次の世代の手続きがさらに複雑化
相続人が増えることで、次の世代で登記する際に手続きが複雑化するリスクがあります。
事例
中村さんは父親から土地を相続しましたが、登記を行わないまま亡くなりました。そのため、次の相続手続きでは、中村さんの子どもたちが二重の相続登記を行わなければならず、手間と費用が倍増しました。
解説
登記を放置すると、次の世代で相続人が増え、手続きが複雑化します。これにより、相続登記のための時間と費用が増え、負担が大きくなります。
4. 相続人申告登記の手続きと必要書類
手続きの流れ
遺産分割協議書の作成(複数の相続人がいる場合)
全員の同意を得て、不動産の分割を決定。
必要書類の準備
-
- 被相続人の戸籍謄本
- 相続人全員の戸籍抄本
- 不動産の登記事項証明書
- 固定資産評価証明書
- 登記申請書
法務局に申請
必要書類を提出し、登記を申請します。

5. 専門家に依頼するメリット
相続登記の手続きは複雑で、不備があると再申請が必要になります。
司法書士や税理士に依頼することで、スムーズに進められ、トラブルを防止できます。
- 司法書士:不動産登記の手続きを代行します。
- 税理士:相続税の申告をサポートし、控除の適用もアドバイス。
費用感
- 司法書士:1件あたり5万~10万円程度
- 税理士:10万~50万円程度
6. 【Q&A】相続人申告登記に関するよくある質問
Q1. 相続人申告登記を怠るとすぐに罰則が適用されますか?
A. 2024年4月以降、相続人は3年以内に登記を完了する必要があります。申請を怠った場合、**10万円以下の過料(罰金)**が科される可能性がありますが、いきなり罰金が発生するわけではなく、まずは注意喚起されることが多いです。
Q2. 登記手続きはどの法務局に申請すれば良いですか?
A. 相続する不動産が所在する地域の管轄法務局で申請を行います。郵送でも手続きが可能です。
Q3. 遺産分割協議書がない場合はどうすれば良いですか?
A. 遺産分割協議がまとまらない場合、法定相続分での登記が可能です。ただし、後から協議が成立した場合、再度名義変更が必要になる可能性があります。
Q4. 遠方にある不動産の相続登記も自分でできますか?
A. 可能です。登記は郵送でも申請できるため、管轄の法務局へ書類を郵送すれば手続きが完了します。
Q5. 相続税の申告と相続登記は同時に行う必要がありますか?
A. いいえ、相続税の申告と登記は異なる手続きです。相続税の申告は10か月以内、登記は3年以内に行う必要があります。
まとめ
2024年の法改正により、相続人申告登記が義務化されました。手続きを放置すると、権利関係が不安定になるだけでなく、過料(罰金)が科されるリスクもあります。相続が発生したら、必要書類を揃えて早めに登記申請を行うことが重要です。
専門家に依頼することで、手続きの不備を防ぎ、安心して相続手続きを進められます。登記や相続税申告に不安がある場合は、ぜひお早めにご相談ください。
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