【2024】7年前の生前贈与でも相続税の対象に?!節税のポイントと非課税枠を解説

生前贈与も相続税の対象に? 贈与税と相続税

2023年度の税制改正が生前贈与に大きな影響を与えます。「7年も前に贈与した財産が本当に相続税の対象になるの?」と心配になる方もいるでしょう。
本記事では、具体例を交えながら、生前贈与の節税ポイントや非課税枠の活用法について詳しく解説します。相続に備え、今からできる対策を知ることで、大切な財産をスムーズに次世代に引き継ぐことができます。


1. 生前贈与と相続税の基礎知識

生前贈与とは?

生前贈与は、将来の相続を見越して、元気なうちに財産を家族に渡す方法です。
例えば、70歳の田中さんが、息子にで生前に500万円を贈与したとします。この贈与により、田中さんが亡くなった際の相続税負担を軽減できる可能性があります。

2つ方法があり、年間の基礎控除額110万円を上手く活用して贈与を行うことで、財産を少しずつ移転し、最終的な相続税対象額を減らすことが出来る「暦年課税」が1つ、贈与税の110万円の控除があるが、被相続人が亡くなった後に基礎控除分を差し引いた贈与を相続課税の対象とする「相続時精算課税」の2つがあります。

どちらの方がお得になるかは、「贈与年数」「贈与額」「受贈者との関係」で変わります。
贈与額が多いけど贈与年数が10年以上と長いのであれば「暦年課税」。
財産総額がだいたい2億円以内で10年未満と短いのであれば「相続時精算課税」。
推定相続人でない孫なのであれば「暦年課税」。

といった感じになります。

2024年以前の相続税と生前贈与の関係

相続税は、遺産を受け継ぐ際にかかる税金のことです。遺産総額が基礎控除額を超えた場合、その残りに対して課税されます。
例えば、田中さんには、配偶者と子供二人がいます。そして、遺産総額が5,000万円だった場合は、相続税がかかります。
この場合の法定相続人は、配偶者と子供2人なので3人となります。※基礎控除額の算出には相続放棄する法定相続人も数に含めます。

そして、基礎控除額は2015年1月1日以降から相続税の基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人数)で計算するので、次の通りです。

4800万円=3000万円+(600万円×3)
つまり、基礎控除額の4800万円を上回っているため相続税の課税対象となります。

相続人ごとの詳しい相続税の算出方法は、国税庁が出している相続税の計算をご覧ください。

相続税の対象となってしまいましたが、生前に贈与をすることで、田中さんの相続税対象額を減らすことができます。
具体的には、基礎控除額110万円を活用して、少しずつ贈与して遺産総額を減らしていく「暦年課税」(2023年までの贈与、2024年より変更あり)や、まとまった額を相続として生前から行い、相続を開始するまで贈与があった金額から2500万円を控除する「相続時精算課税」です。

「暦年課税」は、従来は被相続人が亡くなってから3年以内の法定相続人への贈与は、基礎控除額内であっても、相続税の対象となるので、田中さんが年内に死期を悟って贈与をして遺産総額を減らそうとしても意味がありません。なぜなら、「暦年課税」は、3年以内の贈与もを相続とみなすからです(2023年までの贈与、2024年より変更あり)。

一方で、「相続時精算課税」は贈与した期間関係なく相続時精算課税選択後の贈与合計額に対して特別控除2500万円を控除して超えた分を相続の課税対象とします。


2. 2024年以降の生前贈与が相続税の対象になるケースとは?

「暦年課税」と「相続時精算課税」両方とも決まった基礎控除を超えたら課税対象となります。

2024年税制改正のポイント

従来の相続税法及び租税特別措置法が見直され、より慎重な贈与計画が求められるようになりました。

「暦年課税」
「暦年課税」の従来は、基礎控除額110万円でも相続課税対象となるのは「被相続人が亡くなって3年以内」と話したかと思います。
それが、2023年の税制改正で、2024年からは生前贈与が相続の課税対象となる期間が従来の被相続人が亡くなった3年前から7年前に延長されました。その代わりに、3年より前の4年間については年間100万円の基礎控除があります。
例えば、田中さんが2024年に基礎控除にのっとって年間110万円を息子に贈与した場合、2030年に田中さんが亡くなったら、6年間の260万円が相続税の課税対象になります。

※2024年に相続を開始して被相続人が亡くなったのが2031年の場合は7年、それ以前の場合は、3年+経過年数。

「相続時精算課税制度」
基礎控除額で110万円が毎年受けられるようになりました。

例えば、被相続人が生前贈与を7年間で3000万円したとします。その場合は、770万円の基礎控除で2330万円になったとしたら、この2330万円が相続税の課税対象となります。
※特別控除2500万円は、相続税の計算時には適用されません。贈与税の計算時のみになります。
※相続時精算課税制度の申請をしたら、暦年課税には戻せません。

暦年課税 相続時精算課税制度
①贈与する者 決まりは無し 贈与をする年の1月1日時点で60歳以上の父、母、祖父、祖母
②受贈する者  決まりは無し 贈与を受ける年の1月1日時点で18歳以上の法定相続人、孫
③非課税枠(控除額) 基礎控除-年間110万円/1人  基礎控除-年間110万円/1人、
上記控除後の相続総額-特別控除2500万円
④課税額 10〜55% 20%
⑤贈与税の申告 111万円以上で申告 111万円以上申告

初年度は相続時精算課税選択届出書を提出

⑥贈与者が亡くなった場合の相続税 相続開始前の7年間(3年よりも前の4年間については合計100万円まで控除)に受けた贈与財産は相続財産に加算する。 制度を申請した時点から贈与した財産は全て、贈与時の値段で課税対象額に加算をする。
年間110万円までは加算対象外。
⑦贈与方法の変更 「相続時精算課税制度」に変更可能。 一度申請を出すと変更不可。

 


3. 節税のポイント:生前贈与を活用するための戦略

早めの生前贈与がカギ

早めに生前贈与を開始することが、節税効果を高めるための重要なポイントです。
例えば、田中さんが毎年110万円ずつ息子に贈与すると、10年間で最大1,100万円を非課税で贈与することができます。
この計画的な贈与は、相続時に多額の財産が残らないようにするための効果的な方法です。また、孫や他の家族への贈与も計画に組み込むことで、全体の相続税負担をさらに軽減できます。

相続時精算課税制度のメリット

また、田中さんがまとまった金額を一度に贈与したい場合、相続時精算課税制度を活用することで、贈与税を抑えつつ、大きな額を早期に贈与できます。
また、年間110万円までの贈与は確実に非課税となり、申告も不要となるのです。

例えば、2,000万円の資産を一括で贈与し、息子がその資産を運用することが可能です。運用益が出た場合、それは息子の資産として成長し、将来的に相続税がかかる財産を減少させる効果があります。このように、相続時精算課税制度は、将来的な資産形成を見据えた有効な手段となります。

特例措置の活用法

特例措置を活用すれば、さらに大きな節税効果が期待できます。
例えば、田中さんが孫の教育資金として、1,000万円を一括で贈与する場合、この特例を利用することで、非課税で贈与が可能です。
また、住宅取得資金として最大1,500万円まで贈与できる非課税枠もあります。これにより、若い世代が早期に住宅を購入するサポートができ、同時に田中さんの相続税負担を軽減することができます。

孫への贈与で節税

法定相続人に対する贈与のみが対象とされています。
田中さんが孫に300万円を贈与した場合、この贈与は「孫への直接贈与」となり、相続税の対象外となるケースが多いです。
例えば、孫が大学進学を控えている場合、学費として贈与することで、孫の将来を支援しながら、相続税の負担を軽減できます。
また、孫に対する贈与は、将来の世代に財産を直接引き継ぐ手段としても有効です。孫が成人するまでの間に計画的に贈与を進めることで、次世代へのスムーズな財産移転が実現します。

専門家と一緒に最適なプランを作ろう

70歳の田中さんがこれらの方法を検討する際には大変ですよね。そんな時には、税理士や弁護士に相談するのがベストです。

最新の税制に基づき、田中さんに最適なプランを提案してもらいましょう。例えば、贈与のタイミングや贈与額の設定、さらには遺産全体の配分計画など、専門家のアドバイスを受けることで、最適な選択ができます。特に、複数の不動産や金融資産を持つ場合、相続対策は複雑になるため、早めに専門家に相談しておくことが大切です。


生前贈与に関するよくある質問

生前贈与を行う最適なタイミングは?

早めに始めるのが最適です。例えば、50代から計画的に贈与を進めるだけでもかなりの、相続税の負担を減らせます。相続税の対象となる財産を減らし、非課税枠を有効に活用できるのです。

暦年贈与と相続時精算課税の違いは?

暦年贈与は毎年110万円まで非課税で贈与でき、長期的な計画に向いています。が贈与者が亡くなった場合、亡くなった年から7年間は相続税の課税対象となり、3年以前の4年間は100万円の基礎控除があります。
一方、相続時精算課税は一度に大きな額を贈与でき、毎年110万円まで非課税+贈与額の総額が2,500万円まで非課税で利用できます。相続税の計算時は、2500万円を含めた額で計算されます。

相続時精算課税制度を利用するメリットとデメリットは?

メリットとしては、大きな額を一度に贈与でき、贈与時点では贈与税がかからないことが挙げられます。
デメリットは、相続時にこれらの贈与額が再計算され、相続税がかかる可能性がある点です。また、この制度を利用すると暦年贈与に切り替えることはできないため、慎重な検討が必要です。

贈与税を支払っていました。その場合でも相続税の支払い対象になりますか?

贈与税と相続税は異なるので、贈与税を支払ったら相続税を支払わなくて済むとはなりません。
しかし、贈与税を支払っていた場合は、二重課税防止の観点で、贈与税額を相続税から控除(還付)することが可能です。


まとめ

2024年の税制改正により、生前贈与に対するアプローチが大きく変化しました。
具体的な例を参考にしながら、適切な節税対策を講じることが重要です。贈与のタイミングや金額、受贈者の選定を慎重に行い、大切な財産を次世代にスムーズに引き継ぐための計画を立てましょう。

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